公益社団法人 日本建築積算協会 関東支部
The Building Surveyor’s Institute of Japan from KANTO Branch

2017年 公益社団法人 日本建築積算協会 会長 年頭挨拶  


 会員の皆様、新年おめでとうございます。皆様におかれましては、気持ちを引き締め新たな年に望まれようとされておられることと拝察します。昨年は、熊本や鳥取の震災、東日本北日本の水害など、わが国が災害国であることを再認識させられました。熊本の震災につきましては、協会会員の中の被害が大きかった方に大勢の会員からの支援の志をお届けしたりしましたが、支援にご協力いただきました皆様には改めてお礼申し上げます。また、このことを通し、復旧、復興、そして防災に対する建築分野の役割の大きさを改めて感じた次第です。

 本協会の活動を振り返ってみますと、一昨年は、前半は創立40周年記念やPAQS(太平洋QS協会)の国際会議の大きな行事の遂行が中心でしたが、後半は、本協会活動の今後に向けていくつかの取り組みを進めています。昨年は、多くの方のご支援ご協力をいただき、こうした取り組みの推進に注力し、一定の成果を得ることができました。

 本協会の活動には、公益社団法人としての社会的使命がありますが、その遂行の基本となるものは、建築積算士、建築コスト管理士、そして建築積算士補、の資格者の増加、そして、会員の増強です。ここ数年は増加傾向を維持しており、人材育成委員会や会員委員会の様々な努力が成果につながっているといえますが、これに加えて、中長期的には、これらの資格者であること、そして、本協会の会員であることの価値を高めていくことの重要性を、改めて感じます。資格者の皆さんが自信と誇りをもって業務に励まれ、手がけた建築の価値の向上に貢献され、また、プロジェクトに関わる様々な職務の方々の業務遂行に寄与され、こうしたことが、建築に関わる多くの分野、さらには多様なステークホルダーに認識されるよう、協会本部は、各支部と連携して努めています。

 昨年の具体的な成果としては、まず、人材育成委員会による、建築コスト分野における「人材育成体系」の構築があります。これは、資格者の活動に大いに役立つとともに、資格者が自らこれを再認識し、また、自己研鑽の指針としても活用できるものと考えられます。更には、建築分野におけるコスト関連業務とその従事者への評価を高める効果が期待できます。

 女性会員の活動の発展を目指して結成した、「積女ASSAL」が活動を開始し、いくつかの支部にも展開できていますが、多くの会員のご支援をいただき一層の発展を図りたいと考えています。PCM委員会では、PCMシリーズの一環として「プロの引き出し―その1」を刊行できました。現在の建築数量積算基準では扱いにくい部分のある、CFT構造、逆打ち工法、PC工法、免震・制振構造について、建築積算あるいはコストマネジメントに役立つ内容を取りまとめています。会員や関係資格者をはじめ、多くの方々に活用されることを願っています。

 今後の「プロの引き出し」のテーマとして考えられるのは、2010年に制定された「公共建築等における木材利用の促進移管する法律」を受けて急速に普及が進みつつある中大規模木造建築、長年の懸案でもある設備、多様化が進む情報技術などです。本協会の特色を生かしたテーマの設定や具体的な取り組みに際しては、多くの会員の皆様のご支援を期待しています。評価評定事業も、公共建築の積算などに関し第三者としての本協会への委託が徐々に実績を伸ばしてきています。公益社団法人としての社会的責任を担っていることの一面だといえます。協会の財務体質の強化は、長年の課題ですが、公益社団法人への移行に対応して、その基礎となるべき財務システムが、本格的に機能し始めました。協会活動について、全体観を持った財務面の合理化透明化が進み、今後の様々な検討に大いに活用できることが期待できます。

 本年は、昨年の成果をさらに発展できるよう、協会活動を推進したいと考えていますが、その具体的な方向性などについては、昨年設定した事業計画委員会で検討を進めています。メンバーには、各支部から推薦いただいた実力ある中堅の会員にも加わっていただいており、近々一定の成果が報告されるものと期待しています。協会活動にとって、友好団体との連携も重要です。日本建築積算事務所協会、建築コスト管理システム研究所、日本コンストラクション・マネジメント協会、RICS日本事務所とは、これまで長いお付き合いがあり、様々な活動を連携して展開してきています。2014年にはJ5(日本建築積算協会、日本建築士会連合会、日本建築家協会、日本建築構造技術者協会、建築設備技術者協会)を結成し、認定資格の普及に連携して取り組んでいます。ここ数年、日本の建築界は活況を呈しています。

 また、オリンピック施設、豊洲市場、復興事業などが様々に話題になっていますが、このことを通し、建築が多額のコストを要すること、そしてその適正な扱いが重要であることへの関心が高まっています。積算やコストマネジメントの職務の在り方も、今後の発展に向けて改めて見つめなおすべき状況にあります。本協会は、会員の皆様とともに、関係資格者、協力団体、さらには多くの建築関係者と連携し、新たな年、これらの課題に精一杯頑張って取り組んでまいりたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
公益社団法人 日本建築積算協会
会長 吉田倬郎